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「保健…室」
噛み締めるように繰り返す辰川君はゆっくりと目を瞬いて自分の手に視線を落とす。
そしてなにかを確かめるように手を開閉し顔を上げた。
「……俺は、なんでここにいるんだ。あと今何時だよ。腹減った…。」
徐々に不機嫌そうな顔をしていきながら腹を撫でつつ彼は言い、それを聞いた私たちは言葉を失った。
彼はなにも覚えていない?
いや、もしかしたらあまりにも酷い仕打ちをされたショックで一時的な記憶喪失に陥ってしまったのかもしれない。
そんな考えが私たちの頭に過ぎり、先ほどよりも余計に空気が重々しくなった。
「えっとぉ…篠は階段踏み外して倒れたんだよ。」
そう切り出したのは他でもない、涼谷君だった。
「ハァ?俺がか?」
「うん。因みにここまで運んだの俺ね。俺だってびっくりしたよぉ、だって階段登ろうとしたら篠が倒れてんだもん。」
涼谷君の言葉にしかしやはり訝しむ辰川君だったが涼谷君は上手い具合に身振り手振りでさも本当の事だと言わんばかりに話していく。
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