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「キサマは我の刺客か?その容姿、見覚えがあるぞ。ああ、案ずるな。コイツは側室だ。代えなどいくらでもいる」
美しいモノ好きなクルクセル王。
ルリィの素顔が美しいと理解した途端に冷静さを取り戻しました。
血塗れの短剣を片手に標的を見下すルリィは何も言いません。
殺した妃を一別し、首を傾げます。
何故、家族が死んだのに悲しまないのか不思議に思ったのです。
ルリィは側室の意味を知りませんでした。
「……ルリィ?」
それはとても小さな声でした。
クルクセル王の背後に控えていたリオルが呟いたのです。
死んだ筈の妹の名を。
瞬間、ルリィが静かに微笑みました。
主人であるアリテルーシに呼ばれたようで嬉しかったのです。
「リオルよ。お前の妹はとうの昔に死んでいる。我に逆らい、侮辱した愚かな娘。しかしよく似てるな。キサマ、名は?」
「ルリィ。」
王の問いにルリィは即答しました。
そして、何の前触れもなく短剣の先を王に向けました。
クルクセル王が盾となるモノを見つけ出すより早く刃がふくよかな身体に突き刺さります。
「……キ、キサマ!あの時の復讐か?いや、キサマ生きているはずがない!キサマは何者なんだっ!」
突然焦りだしたクルクセル王。
刺されたと気付いた時には遅く、逃げる暇もありませんでした。
ルリィには王が何を言っているのか分かりません。
自分を誰かと重ねている哀れな人間と解釈しました。
しかし、一度抱いた疑問は消えずにルリィの思考を支配します。
アリテルーシは王に月を見せたくないと言いました。
それだけではありません。
「そう。王サマ。アナタはワタシを傷つけたのね。アリテルーシ様が言ってたの。醜い人間って。だから、間違い無い」
ルリィにとって、アリテルーシの言ったことは絶対でした。
それ以外はどんな事を言われようと信じたりはしません。
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