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国中の明かりが消えた真夜中。
森の目の前に佇む城だけが明かりを灯し、賑やかでした。
王サマは毎日城に美しい者を集めて夜会を開いていました。
「ガッハッハッハー。酒が足りぬ。もっと持って来い!」
金で作られたグラスを片手に、毛皮のマントを着た王様が叫びます。
毛皮は森の兎を何匹も殺して作らせたものでした。
隣には美しく着飾ったお后様が居座っています。
斜め後ろに控えていた家来は困ったように眉を下げ、言いました。
「殿下。それ以上はもう……国の予算が底ついてしまいます。どうか、ご理解を」
「大臣。お前は我に口答えするのか?政治を任せてやっているのだから税を増やすことぐらい出来るだろう。早く酒を」
「しかし、クルクセル王!あなた様は国を潰す気なのですか?税を上げれば国民は飢え死にしてしまいます。私に政治を任せて下さったのですから今少し話を聞いて頂きたい」
「黙れ!大臣。いや、リオルよ。キサマまで我を愚弄し、裏切るのか?国にとって我は絶対。それは奴隷でさえ知っていることだ。伯爵家当主であるキサマが知らない筈がない。ならば従え。二度目は無いぞ……酒を持って来い」
伯爵家当主リオルは大臣として立派に政治をこなしていました。
車椅子から降りることの出来ない身体でも国の為、国民の為に休みなく働いています。
己の事しか考えない王族と違って国民のことを一番に考えているのです。
「はい。王サマ。お酒はこにちらに」
突然、煌びやかな衣装をまとった踊り子を掻き分けて酒を手にした少女が現れました。
腰まで伸びた艶やかな金髪はリオルの髪色と同じでした。
白い肌を隠すように仮面を被っています。
それから、純白の膝丈ドレスを小さな身体で着こなしていました。
「おお!娘。気が利くな。我が前に跪き酒を注げ。勿論、我が妻にもだ」
上機嫌にお后様の肩を抱き、少女に手招きするクルクセル王。
少女が近付く事を止める者は誰もいませんでした。
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