赤ずきん

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「……はぁ。物語が解るってのも考えものね」 ある晴れた昼下がり。雲一つない青空も照らせない程に鬱蒼と繁りに繁った森の中。 私―――赤ずきんの心も森に負けじと黒く染まっていた。 私にはとある事情により物語を理解する能力と、もう一つ不思議な能力がある。代わりといっては何だけれど自分の名前を忘れ、赤ずきんとしか名乗れなくなった。酷い代償だわ、まったく。 それもこれも―――っと、これは考えるだけ無駄ね。 …………………………。 突然だけれど。 今日、私のお婆ちゃんの命日となる。 死因は狼に食い殺されるとかなんとか。 そしてムカつくことにその狼は食べたお婆ちゃんに変装して私を騙し、そして食らうつもりらしい。狼の癖に生意気よね。 しかし大体にしてお婆ちゃんにも問題あるわ。こんな暗い森の中に住むなんて自殺願望でもあるんじゃないかしら。 ……と、言っても家族を見殺しにする気にはならないけど。 仕方がないから私が助ける。 こんな能力があるから、私が、助ける。 物語を理解する能力―――【赤ずきん】の物語。 いい迷惑よね。能力が世界に影響を与えるなんて。 それも、人が死ぬような運命に無理矢理ねじ曲げて。 「ほんと、いい迷惑よ……アリス」 ……見えてきた。お婆ちゃんの家。 さて、憂さ晴らしでもしましょうか。 派手に、ね……。
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