23人が本棚に入れています
本棚に追加
「……あれでも愛着のある家なんだがね、クレイジーレッド」
知りませんよー、と棒読みで返し、森を抜け私の家へと向かう。
途中にエンカウントした第一村人が何か恐ろしいモノでも見たかの様に悲鳴をあげて「マッスルだー! マッスルが来たぞー!」と叫んでいたが、持ち前のスルースキルを遺憾無く発揮し華麗にスルーした。
程無くして、村長宅より立派な我が家に到着。元々はここが村長宅だったのだが「交換して?」と手土産に血に塗れた狼を六頭くらい投げ渡してやると、快く私の元々の家とトレードしてくれた。村長ってばやっさすぃー!
お婆ちゃんの視線が痛いが「てへっ、ぺろー」と返すと絶対零度の冷気が私を襲った。
「……ウ、ウヒヒっ! まぁ、入ってよ」
「……クレイジー」
「単語で終わるのは流石に駄目だと思うの」
心の汗をさめざめと流しつつ扉を開く。
元村長宅というだけに村の幹部共との集会会場にもなっていて、一階は壁をなくした無駄に広い設計となっていたりする。因みに私室などは全部二階にあるので、このワンフロアには狩猟道具やら危険物やらを置かせてもらっている。
村民避難用に地下室もあるのだが、私には使い道がないので非常食を置いている以外にはほとんど放置状態。カビてなければいいけど……。
……………………。
気にすることはないかな。ここもあと少ししたら私の家じゃなくなるし。
「とりあえず座ってよ、熊婆」
「座るとこが見当たらないんだがね、ジャンクガール」
「野生の熊がソファーを望むんじゃないよ。せめて人間にジョブチェンジしなさいね」
遠回しに床に座りなさいよと言って、私は狼の剥製に腰を据える。この狼は私のだ。だれにも渡さん!
最初のコメントを投稿しよう!