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チッと舌を鳴らし、雑に鉈や鎌やと退けて床に座るお婆ちゃんを確認し、私は口を開いた。
「今日から私は旅に出ようと思うの」
「……なんだい、藪から棒に。まさかそんなふざけた理由で家を壊したなんて言ったら……あたしゃ呆れて何も言えなくなるよ?」
「それは私が旅に出る理由よ筋肉神」
「それもうただの筋肉じゃないかい」
やれやれ……これだから筋肉は困るわ、と聞こえるように呟いて行商人から十の金狼毛皮で買い取った絡繰り大国の最新技術の横流し品を取り出す。
因みに金狼とは金色の毛皮を持つ群れのリーダー。女を知らず、闘いのみを愛した狼が至るという極致。さらに因みに魔法を使ってきたりする。
一匹で小さな村程度なら廃村にしてしまう程に強いのだけれど……私にしてみればお金の塊でしかない。凄く懐が暖まりました。ウヒヒ。
「なんだい、そりゃあ」
おっと。
「これは絡繰り双子人形だよ」
「……双子、ねぇ。片割れはどうしたんだい?」
「それはこの人形の目を見ればわかるよ」
ほら、と投げ渡して目を覗き込むよう伝える。絡繰り大国の“変態”の意地を見せた作品……双子である意味は覗く事で初めて理解できる。
「……あたしの家? どうなってんだいこりゃあ」
そう……この双子人形は片割れが見ている景色を覗くことができちゃうのだ。
視界リンク絡繰りといって、双子の目は全面鏡張りの“超”無駄に長くて丈夫なチューブで繋がっている。
反射を繰り返して片割れの見る景色をそのまま見る……言葉にすれば簡単だが考えてみれば難しいってレベルじゃない。ほんと変態さんはよくやったと思う。
バレて自警団に捕まったらしいけどね。
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