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『しかし、しかしだ……! あぁ、なんたる運命の悪戯か……彼女は強すぎた。理不尽な程に。現に我等狼の中でも頂点を争う金狼が手も足もでなかった。振るった地を砕く鋭き爪は彼女の肌を一欠片も削ること叶わず……纏いし堅牢な甲殻さえも噛み砕くその凶悪な顎は! 猛々しき牙は! 味を知ることもなく砕け散ったっ……! 私は震えたよ……恐怖にね。しかしそれは同時に歓喜の震えでもあった。くふっ……強者としての性かな? 食らってみたいのだよ。強き者の肉を。命を! 魂を!! 辛いんだよ……あの日から私をどうしようもない食欲が狂わせる。あぁ、いっそ狂ってしまいたい……そう思った日もある。だがね、それも今日までだ。報われる時が来たんだ。―――お婆さん。私は貴女になる。貴女を食らい【赤ずきん】を待つ。油断した彼女を……頭から……くふっは! さぁ、メインディッシュが来る前に前菜を食らっておきましょう! それでは不幸なお婆さん。幾千にも幾万にもゴキゲンヨウ。来世で未練を果たすといい―――』
「あ、ポチッとな」
チュドォォォオオオオオンッッッッッ!!!!!!!
<ウ、ウォォォ!? ナ、ナンダ!?
<モリダ! チョウドチュウカンアタリ……マッスルノスミカダ!!
<ナ……ナラマッスルハシンダノカ!?
<ウォッシャー! コレデモウマッスルニオビエルコトモ……
<ア、サッキマッスルガアカズキンニツレラレテムラニカエッテルラシイゾ
<ッテ、コイツガイッテマシター
<オマッ!?
「…………赤ずきん。ちょっと、席を外すよ。後で説明は聞く」
「行ってらっしゃーい、お婆様」
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