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「あー、知ってる。近くに運動公園あるとこだよね。
中学の時に何度か競技場に行ってたから知ってるよ」
確かに福中の近くに運動公園はある。
総合だからかなり大きな公園で、大体のスポーツはできちゃうくらい。
そっか。なんか知ってもらえてるのって、意味なく嬉しいね。
へへっと笑うと岡本さんも同じように笑い返してきた。
「何だ、もっとつんけんしたタイプかと思ったけど違うんだね」
岡本さんは歯に衣を着せぬタイプらしい。
嫌いじゃないな、こういう人。
きっと、陰で悪く言わないだろうから。
「さっき、十和田春海君?と話してたでしょ。すっごく素っ気ない上にビンタしたし、クールだなぁと思ってたんだ」
あー、見てたんだ。
うん、見てるよねぇ。少なくともクラスの三分の一くらいは見てたもんね。
「彼は小学校が一緒だったんだ。私は彼が嫌いだからそれで。他の人にはあんな態度しないよ」
肩を竦めて苦笑する。
春以外にはしない。
春を思い出すと腹が立つし、今もムカムカする。
春にだけ苛々する。
「へー…、嫌いなんだ」
「……っ」
後ろ上から降ってきた声に私は息を呑んだ。
振り返らなくたってわかる。
いつの間に後ろにいたんだろう。
どこから聞いていたんだろう。
どうせ大した話はしてないんだから構わないけど。
「十和田君、木下さんと仲悪かったの?」
うわぁ、岡本さんそれ聞いちゃう?
春はなんて答えるのかな。
理由も知らずあんな平手打ちされて、嫌い宣言されて、私なら嫌いだ、て言っちゃうよ。
勝手だけれど、人からその言葉は聞きたくない。
例え自分が嫌ってる相手からでも。
「俺は仲良かったと思ってたけど?今もあずの事、好きだし」
………は?何、その意味深発言。
ほら見なさいよ、岡本さんだってぽかんとしてる。
「ね?あず?」
そこで私に振るかな……。
「岡本さん、この人の言葉は聞かないでいいから」
「えー、聞きたいよ。でもそれより携帯教えてよ。持ってる?」
「うん」
私はカバンの中から携帯電話を取り出した。
「あと、岡本さんじゃなくて美穂って呼んでね。私もあず、て呼んでいい?」
「いいよー」
後ろに春の気配がしてたけど私は無視を決め込んで、美穂と携帯電話をいじる。
そうしてアドレスを交換すると、美穂は席を立った。
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