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「なぁ、その制服、堂坂だよな?空澄と一緒んとこなんだ?」 「ああ、そうだよ。しかも、あずと同じクラス」 「またぁ?!それって凄くない?」 ゆかりが興奮して私を見る。 「確かに凄いね」 苦笑してそう返すと、一馬は私の肩をがしっ、と掴んだ。 「運命だな」 にんまり顔の一馬を一瞥する。 「腐れ縁て言うんだよ」 「あずってば、もう」 「あずは俺に冷たいんだ。ひっぱたくし、どつくし、無視するし。面向かって嫌い、て言われたし」 「酷いよ、あずっ」 ………ちくった。最悪。 に、しても行為を言葉にしてみると、私酷いな。 けれど、春はもっと酷い事してる。 でも!言えない。 ファーストキスを奪われた、なんて。 したかったからした、なんてふざけた理由でされたなんて。 言えるわけないじゃん。 バカ春の馬鹿。 「は?それ俺の事言ってる?」 「…………」 どうやら声に出してたみたい。 居たたまれなくなって、私は春から一歩横に遠ざかった。 「何?逃げんの?あずちゃん」 ムカつく言い方。 絶対私をからかってる。 「うるさい」 睨み付けた。 途端、ゆかりが袖を引っ張る。 「あずぅ、仲良くしようよ。せっかく十和田君帰ってきたんだよ?」 「あのね、ゆかり。もう小学生じゃないんだよ?いつまでも仲良しこよしとか、気持ち悪い」 刹那、ゆかりが傷ついた顔をした。 「空澄、言い過ぎ」 こつん、と一馬に頭を小突かれ、私はしまったとばかりにフォローする。 「ゆかりは好きだよ。ずっと仲良くしたいと思ってる。一馬もそうだよ。 私が嫌なのは春だけだから」 ぎゅっと眉根を寄せたゆかりに焦って、私は慌てて言葉を足した。 「だからね、ゆかりは違うからね。ゆかりは凄く大事なの。一馬もおまけで大事。いらないのは春だけなんだよ?」 ますます、眉間の皺が深くなったゆかりに、私はどうしていいのかわからなくなった。 好きな人が不機嫌になるのは対応に困る。 「………空澄、おまけとか酷いな」 「まだいいよ。俺なんて嫌な上にいらない、だよ?酷すぎて泣きそう」 泣き真似をしだした二人に、私は呆れる。 「本心なんだから仕方ないじゃん」 ますます泣き真似を大袈裟にする二人に、私は溜め息をついた。 .
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