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何とか頂上に到着すると、待ちくたびれたかのように、美穂と葉月が座ったままこっちを見てるのに気付いた。 「お待たせ」 「遅すぎっ。どんだけ待ったと思ってんの」 「ごめんね、これでも結構頑張ったんだよ?」 「まぁ、最後じゃないしね。許してあげるよ」 どれだけ上からなんだか。 でも、憎めないのが、美穂と葉月なんだよね。 「班の全員が揃わないと、チェックしてもらえないんだよ?十和田君、早く行くよ。べりとかありえないんだから」 体育会系はすぐ勝負したがるんだから。 春と私は顔を見合わせて肩をすくめると、二人について教師のもとへと向かった。 「登ってきた分、また歩かなくちゃいけないと思うと気が重いなぁ」 敷物の上に座って、一息つく。 そう呟くと、横から葉月が私の背中をぽん、と叩いた。 「帰りは荷物軽いんだから、もう少し早く歩けるよね」 そのにんまり顔に、私は乾いた笑いを返した。 「………また、競争?……ですね、……はぃ」 じっとりと見られ、私は慌てて返事をしてしまった。 嫌なら嫌だって言えばいいものの、こういうノリって断れない雰囲気になっちゃうんだよね。 諦めてリュックからお弁当を出す。 もう暖かい季節だからと思って、念の為、保冷剤を入れてきたのは正解だったと思う。 じんわりと汗ばんだ身体に、冷たいお弁当と暖かいお茶が丁度いい。 「ねぇ、あずのお弁当、めっちゃ美味しそうなんだけど」 「ふっふっ、でしょう」 「何、その笑い。気持ち悪いんだけど」 「我ながら頑張ったなぁ、ていう笑いだよ」 「え?あず、自分で作ったの?凄くない?」 美穂があんまり驚いてくれるから、私は得意気な顔をして、みんなを見る。 「なかなかやるでしょ?」 「うんうん!凄い。これあげるから、唐揚げ頂戴!」 「え?」 答えも待たず、私のお弁当箱にブロッコリーが放られ、代わりに唐揚げが一つ奪われた。 「ちょっ、美穂!そのトレードはないっ」 「あー、じゃぁ私はこれと交換ね」 反対側からミニトマトがお弁当箱に落とされ、もう一つ唐揚げが奪われた。 「葉月っ」 「じゃあ俺はこれな」 今度は春がきゅうりの浅漬けを置いて、唐揚げを持っていく。 「だ、ダメっ。最後の一個だから。ベジタリアンみたいになっちゃうよ!」 「えー?俺だけ?」 だって、二人はもう口の中に入れちゃってるもん。 .
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