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夏休みなんてものは、捉え方は人それぞれだと思う。 高校生らしく部活動に励んだ人もいれば、時間のある限り遊び尽くした人もいる。 その中に、バイトに勤しむ人間がいたっていいと思う。 けど、私の優しいお友達は……。 「マジウケる。あず、一ヶ月間何やってたの」 「夏休み前と全く変わってないよ。引きこもりしてた?」 みんな、皮膚ガンになってしまえ! などと、一瞬物騒な思いが頭をよぎる程、全く日焼けをしていない私を、二人は笑う。 「うちの店、真っ黒じゃお店の雰囲気に合わなくておかしいの!」 唇を尖らせると、二人はもっと面白そうに笑う。 私、そんなにいじられキャラじゃないと思うんだけど。 「あずは、薄幸の美少女だからいいんだよ」 ああ、春まで加わりだした。 「……薄幸じゃないし」 「ふはっ。美少女は否定しないんだ」 面倒くさい。 「あずは可愛いよ。美少女じゃないけど。いてっ」 思いっきりすねを蹴り飛ばしてやった。 「あずぅ、そこはマジ痛い。股間とすねは勘弁しろよ」 「やだ、十和田。それじゃ他の場所なら殴る蹴るオッケーみたいじゃん」 「あずならな」 「うわぁ、ドM発言。引くわぁ」 「俺、あずになら縛られたい」 ふるふると私のからだが奮えだす。 「いい加減にしてよ、春!あんたがMなのはどうでもいいけど、私はSじゃないからねっ」 「あずがキレたっ」 「十和田が怒らせたっ」 「美穂も葉月も!」 キッと二人を見ると、二人はヒッと息を呑む。 「あずぅ、私はあずの事Sだなんて思ってないよ?」 「うんうん、どっちかと言えばMだよね」 「そうそう、もて遊ばれちゃうほうが、あずらしいよ」 「うん、そうだな。あずを縛るのもありだな」 「いい加減にしなさーい!」 椅子から勢いよく立ち上がる私を、三人が諫める。 「やだ、あず怒んないでよ」 「そうだよ、落ち着いて」 「ごめんなさいは?」 据わった目で問う。 「「ごめんなさい」」 「………アイスクリームで許してあげる」 そう言って私はにっこり笑んで座りなおした。 「う、まさか」 「演技だった?」 その問いに私は答えない。 美穂たちの扱いも慣れたものだ。 実際少しも怒ってなんかいないし、遊ばれるのにも慣れた。 でもね、私だってやられてばっかじゃないんだからね! .
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