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季節の流れは早い。 一日一日は長く感じるのに、高校に入学してもう、半年も経っている。 まぁ、私の場合勉強に追われていつのまにか、て感じなんだけど。 今月の末には体育祭、そして、文化祭、その後にテスト。 何だろなぁ、このシステム。 楽しい事の前後に必ずテストがある。 ん?逆なのか? テストの合間に楽しい事をちょいちょい入れてくるのかな。 うちの高校の体育祭は、クラス対抗で、優勝したクラスには校長から金一封が出るとか出ないとか。 そんなものなくても、勝負というだけで燃える人もいる。 美穂たちのように。 「あずの友達、面白いね」 部活を始めて帰りの時間が合わなくなったゆかりが、久々に遊びに来た。 「間違いなく面白いよ。ポジションは武道家だね」 「あは、懐かしい」 そう言ってアイスティーをすする。 今日はお店がお休み。 ゆかりはそれを知っているから、来たのだと思う。 「で?何か話があったんじゃないの?」 話なんてなくてもゆかりと会うのは好きだから構わないけれど、一人で来るのは珍しい。 「…う…ん」 縁の表情からして、きっと深刻な話ではないと思う。 でも、言いにくいような話、て何だろう。 私は縁が話しだすのをじっと待った。 「……一馬がね」 あー、一馬の話か。 何だろう、告られたとか? もしかしてゆかりが告ったのかも。 「告白されてた」 「は?」 全然違う言葉に、私は目を丸くした。 告白されてたから何だと言うんだろう。 これで一馬がオッケーしたのなら話は別だけれど、ゆかりの表情はそれほど暗くはない。 「駅で一馬見つけて、そしたら女の子も一緒で」 「一馬の返事、聞いた?」 「断ってた」 その答えに、ホッと息をつく。 「だったらいいじゃん。何が問題なの?」 「その女の子に言ってたの。『女に興味ないから』て」 「ぶっ」 くわえていたストローを思わず吐き出しちゃった。 「…一馬、彼女いらないんだって。私も告白したら振られちゃうのかな」 深刻ではない理由はそこか。 振られる可能性もあるけど、他の女にとられる心配がない、みたいな。 馬鹿だなぁ、一馬もゆかりも。 知らぬは本人ばかり。 一馬の好きな人なんて、一目瞭然なのに。 でも、私はそれをゆかりには教えない。 それを私が言ってしまうのは簡単だけど、本人が伝える前に気持ちを話すのは違うと思うから。 .
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