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「一馬が男を好きだなんて聞いたことないよ。ゆかりもでしょ?だったら断る口実じゃない?」 一馬がゲイだったら、春とくっつけていじってやるのに。 なんて、酷い事を考えてみる。 「ゆかりは文化祭でプリコンとかいうの出て、一馬に告るって言ってたじゃん」 「うん」 「だったら前向きに頑張りなよ。ゆかりが振られたわけじゃないんだから」 「だね」 力ない笑みを浮かべるゆかりに、私はどうしてあげたら元気が出るのかわからない。 気持ちも考え方も人それぞれだし、感性の違う人間を理解してあげられる程、できていない。 本当は何とかしてあげたいと思う。 ゆかりのこんな顔見たくないし、させたくない。 けど、私がわかるのは、この件に関してゆかりを元気にできるのは一馬だけだという事。 「……一馬呼ぼうか?」 だから、言ってみた。 「いい!今はいい!」 両手を前に伸ばしてぶんぶんと手を振るゆかりは、漫画みたいだ。 「もうすぐ春も来るだろうし、呼んでもおかしくないよ?」 「………え?十和田君来るの?」 「うん。お店が休みの日は来るよ」 「そうなんだ。…仲良しに戻ったんだね」 何だ?その顔は。 私は疑問符を浮かべて首を捻る。 春と仲良くなればいい、て言ってたのはゆかりなのに。 「春と何かあった?」 「ん?ううん。何もないよ。しばらく会ってないなぁと思って」 何かおかしい。 て、言うか怪しい。 何か隠してるっぽい。 「ゆかり?」 「何?」 気のせい?かな。 ゆかりの瞳を覗き込んでもわからない。 「春と会ってかないの?」 「んー、やめとく。十和田君と話す時はいつも一馬が一緒だったでしょ?何か落ち着かないもん」 ああ、確かにそうだった。 ゆかりと春が二人でいるところは見たことない。 いつも一馬が間にいた。 「もう少ししたら帰るよ」 ゆかりはそう言って残りのアイスティーをすすった。 .
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