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月日が経つのは早い。 一日一日は長く感じるのに、過ぎてしまえばあっという間のだったように感じる。 閉めきった窓ガラスは風によってカタカタと音を立てている。 その風は落ちた木の葉を舞上げて、握れば粉々になりそうなそれが生き物のようにひらひらと飛んで地面へ落ちていく。 「寒いね」 その声に、木枯らしをぼんやりと見ていた私は、窓の外から声の主へ視線を移した。 「おはよ、春」 「おはよう」 私の隣に腰掛ける春。 少し前の席替えで、私は人気ナンバーワンの席、窓際の一番後ろをゲットした。 この籤引きで今年の幸運を使い果たした気がする。 て、言ってもあと一ヶ月で今年が終わるんだけど。 そして隣はなぜか春。 美穂と葉月とは離れてしまった。 席替えってもっと頻繁にやるものだと思ってたんだけど、一回しかしないんだって。 中学の時は一学期に一回やってたから変な感じ。 つまりは、進級するまで春は私のお隣りさんになった。 仲良くない人じゃなくて良かったと思う。 「数学の課題やってきた?」 問われ、私は首を捻った。 「あず、今日当たるだろ?」 「あっ、そうだった!」 すっかり忘れていた私は慌てる。 どうしよう。まったく頭から抜け落ちてた。 焦る私に春はにやにや笑う。 「………その顔、やってあるんでしょ。見せなさいよ」 …………。 なに、その顔。 絶対ろくな事考えてない。 「……何よ」 「寝る間を惜しんで頑張った課題を、あずは写すだけなんだ?」 自力で頑張れとでも言うのだろうか。 私の最も苦手とする数学を! 無理に決まってる。 だって数学は一時間目だもん。 「はるぅ」 甘えて言ってみた。 か弱い女子が可愛く言ってるんだから折れてくれないかな。 「きもっ」 その声に、主を睨み付けた。 「美穂は黙ってて」 「あは、おはよう、あず。冗談じゃん、睨まないでよ」 「おはよ……。美穂が数学の課題やってあるなら許してあげる」 「あはは。やってるわけないじゃん」 ですよね。 私はもう一度春に向き直ってお願いを試みた。 因みにその春は、私と美穂のやりとりに肩を震わせて笑っている。 何よ、春も気持ち悪いとか思ったわけ? こっちは必死なんだよ。 だって、数学の先生、ねちっこくて怒られるの嫌なんだもん。 .
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