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自分でやらせる為。 本当に春がそう思っているのかと言えば、絶対に違う。 このにやにや顔は、違うと言い切れる。 「どうしようかなー」 春さん、私で遊ぶ気満々ですね…。 「タダでとは言わないよ?今日の夕飯、春の好きな物作って上げる。 何がいい?ピーマンの肉詰め?白菜のクリーム煮?」 こっちだって必死だ。 春が課題を見せてくれないと、ねちねち攻撃を受けなくちゃいけなくなるんだから。 「新婚の会話か」 そうつっこんできたのは葉月。 「あ、おはよー葉月。今ね、新妻のおねだりに新夫が応えようとしてたとこだよ」 美穂、その解釈はない。 「可愛い妻のおねだりには逆らえないとこなんだけどね。ここは夫としての威厳を保…」 「春っ。乗るな!」 この四人でツッコミは私しかいない。 放っておけばこの寸劇はチャイムが鳴るまで続くに違いない。 早くこんなの止めて課題を写させてもらわなくちゃ。 「もう、何でもいいから課題見せてよ」 「それ、おねだりとは言えないな。そんな可愛くない言い方されても見せたくない」 「……………」 いやいや、落ち着け私。 ここは言う事を聞くしかない。 「お願い、春」 上目遣いでお願い。 かなり恥ずかしい。 これでどうだ。 「………そんなおねだりじゃまだまだ」 「あはは。十和田、照れてる!」 「本当だ。ウケる」 「うるせーよ。あっち行ってろ。新婚の邪魔するな」 春はそう葉月たちに言って、席に座って頬杖ついてこっちを見た。 「あず、どうしても見せてほしい?」 急に優しくなった声に、私は訝しむ。 「当たり前!」 「その言い方、可愛くない」 「……見せてほしいです」 屈辱的だ。 「だったら俺のお願いもきいてよ」 ……春のお願い。 何だろう、ちょっと怖い。 無茶なお願いじゃなければいいんだけど。 「私にできることなら…」 恐る恐るそう答えると、春はにっこりと笑んでノートを私に差し出した。 「言質、取ったからな、あず」 早まったのかもしれない。 春の笑顔に頬を引きつらせる。 何をお願いされちゃうんだろう。 もしかしたら、ねちねち叱られた方がましだったんじゃないか、て。 あは、そんなわけないよね。 .
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