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(あー…またやってる…)
気怠い午後の授業中、ほとんどの生徒が教師の目を盗んで惰眠を貪る時間。
眠くて仕方がないのは、彼、楓月古都も同じであったが、彼にはそれ以上に大切なことがあった。
見つめる先には格好いいとは程遠い可愛らしい青年が、体操着に身を包み、顔を歪めながらグラウンドをゆっくりと走ってゆく姿。
きっとそれが彼の全力なのだろう、息が切れ、顔も朱に染まっている。
(相変わらずどんくさー…)
漏れる笑いを必死に抑え、列の最後尾(といっても前の人と一周分は差があるのだが)にいる青年に目を向ける。
最初は小馬鹿にして見ていた古都だが、回数を重ねるごとに馬鹿にしているのではない笑みが零れた。―なんか可愛い。
名前も知らない彼に、古都は少しずつ惹かれていった。
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