まえがき

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1.おひめさまとおうじさま 「………」 2号室に入るのには勇気がいる。この内科病棟で1番広い個室。明るくて綺麗な部屋。 ただ、個室にいる患者さんていうのは、ターミナルといってもう亡くなる間近か、病気で免疫力が落ちてて大部屋に出来ないとか、そういう人。あまり朗らかに行きにくい。 そして2号室の患者さんは、さらに。 コンコン。 「おはようございまーす」 私はにっこり笑ってノックして入る。明るい日差しが入る窓。ベッドに横たわるねねさんが、こちらを見てにっこり笑った。 「あら、ややちゃん。おはよう」 20代後半のねねさんは、サラサラロングヘアに華奢な身体、色白の美人さん。見ているだけでうっとりしてしまう。 「すみません、お注射です」 「あら、痛くしないでね」 「ひえー!頑張ります!」 軽口を叩きながら、ねねさんの細い白い腕をきゅっとしばり、小さな注射をする。
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