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江戸の町、ある呉服屋では今までにない大喧嘩が起こっていた。 一人息子で若旦那の三郎太が、吉原から遊女を勝手に身請けして来た挙げ句、その遊女に帳簿を任せようと言うのだ。 勿論、旦那は大激怒し、連れて来た遊女を禄に見ず、怒鳴り散らした。 三郎太も三郎太で、親の気持ちも考えず実の親父に噛み付く。  「お父ちゃんはいっつもそうだよ!! 私のする事にいちゃもん付けて! 私だってもういい大人だ! 黙ってて貰えるかい!!」  「あたしからすりゃまだまだ子供さ!! どうするんだい、働き手と言えども遊女は家事が出来ないと言うじゃないか!!」  「浮雲は普通の遊女じゃないんだ、そんぐらい出来るよ!!」 白熱する喧嘩を見、元遊女、浮雲は「こんな三郎太初めて見たなあ」と少しズレた感想を抱いていた。 口を出したら余計捻れそうなので大人しく黙っている事にした彼女を、旦那の隣にいる奥方はじっと好奇の目で見つめている。 混沌と呼べる空間がそこにあった。
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