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 「仮に遊女じゃなかろうと、こんな人の陰に隠れて黙ったままの奴なんざ、雇おうとも思わないね!!」 「このままは流石になあ」と思っていた所へ、丁度良く水を向けられた物だから、浮雲はつっかえつつも答えようとした。 それを三郎太は押さえ、言い返す。  「私が黙らせてるんだ!!」 また始まった怒鳴り合いに浮雲は閉口した。 そんな中、こっそりと前に出て来た奥方は浮雲を呼び寄せ、二人で奥へと引っ込んだ。 ―――― 店の裏には立派な平屋建ての居住区があり、奥方は自分の部屋と見られる部屋に浮雲を連れ込んだ。  「あ、あの?」 部屋の箪笥の一番下を開け、何やら引っ張り出しては畳に置き、を繰り返す奥方に声をかけると、奥方は「ちょっと待ってて頂戴ねー」とだけ言った。 出してから少し考えつつ、いくつかの着物や帯を戻した奥方が言う。  「このくらいかね。 ちょっと来て、お浮ちゃん。」 慣れない呼び方に、戸惑いつつ、浮雲はそっと近寄った。
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