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綺麗に纏めて、紐で結った後、奥方は浮雲に正面を向かせた。
「…………。」
「あのー?」
黙り込んだ奥方に声をかける。
「これで、三郎太達の前に行こうか。」
「え、ちょ」
浮雲の手を引き、奥方は大喧嘩の場に出て行った。
「まあまあ、あんた! 三郎太はいい買い物したかも知れないよ!」
部屋に入るなり奥方はそう言う。
旦那と三郎太は奥方に注目し、息を呑んだ。
「う…き、ぐも……?」
三郎太が呆然とした顔で別人のような浮雲を見つめる。
「あんた、これは雇うしかないよ! 珠算が得意で、こんな美人で!」
「う、だが、しかし」
見とれて置きながら渋る旦那に奥方は最後の一押しの文句を言った。
「じゃあ一両分の期間タダ働きでさあ! その後も続くかどうかはお浮ちゃん次第で!!」
暫し考えてから頷いた旦那に感謝を述べ、ふと振り返ると、三郎太が浮雲に何やら言ったらしく、浮雲が照れながら俯いていた。
(嫁に、なってくれそうなんだけどねえ。)
微笑ましい光景に、かつての自分達を重ねながら。
奥方はただ二人を見ていた。
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