prolog。

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あっという間に数ヶ月が過ぎ、卒業式になった。 名字は"や"から始まるので列では一番後ろ。後ろからはなにもないと思えば最高の位置であったが、陰口はどこにいても聞こえるので変わらない。神城に見られるといけないらしいので直接的なイジメがほとんどないのだが、それはなんだか矛盾しているような気がしてならない。あいつらの言い分は神城の代わりらしいのに。 あの事件が起こってからの数ヶ月間は、あまりにもイジメが酷かった。上履きに画鋲が入っていたり、ノートや教科書は落書きなら良い方で最悪なのがすべて破られていること。ひどい時には校舎裏でリンチに近い暴行だな、カッターを取り出した時は殺されるかと思ったし。 でも、そんな暴行よりも俺を一番傷つけ、一番最悪な事は親にも助けてもらえなかったことだ。日常的にDVを受けて、身体中傷痕で彩られ、いつ後遺症が残るようなことをされてもおかしくない。 その他はetc.が付きそうなほどあるが、思い出しても意味がないので省略する。笑い話程度のお話だから、気にしないしな。 卒業式後、最後の記念として校舎裏で暴行を受けてから校舎を出る。学校から出るとき、神城が校門の端から出て来た。影が見えていたから別に驚かないが……早く帰らしてくんねぇかなぁ……。 「ちょっと話があるんだけど…いいかな?」 こっちは話したい事なんてさらさらなかったし、帰って消毒をしないと……流石にばい菌で死にたくないしなぁー。 「ごめん、もう関わらないで。家帰って消毒をしておかないと。お母さんからも殴られないといけないからさ、さっさとどいて。」 「っ!…ごめん!!僕が悪いんだ…ごめん!!!」 それからひたすらごめんと繰り返す神城に苛ついた。 今でも"見えないのに"。 「俺の左目返せよ。」 そう言うと黙る神城。 医者からは一生見えないと言われた。 絶望したよ、誰だって自身の一部が一生使えませんと言われたら嫌だろう? 「もう関わらないで。」 念押しにそう言って帰路につく。 無言の神城を背にしながら俺は今日はどうやって耐え切るかを考えていた。
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