第壱話 憎悪、そして不幸

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「そ、それは……。」 言葉を濁す、幼馴染さん。まぁ、あのなかじゃあマシなの由美だけだし、おかしいことはおかしいって感じていたのかもしれない。しかし、でも。 「お前はいつも流されているだから、辛くともなんともないんだよな。そりゃ一緒にいられるわけだ、凄いね、尊敬するよ。そこのなにも言えない、不出来なイケメン君よりは。」 今度は、不出来なヒーローに顔を向ける。横でギャーギャー騒いでる美由を黙らしたいが、俺がなにを言っても聞かないだろう。 「なっなによその言い方!!私はともかく龍牙とお姉ちゃんはなにもしてないじゃない!!」 五月蝿いし近所迷惑だ、近くのおばちゃんが見てるし。囃し立てられても知らないぞ?おばさんネットワークは光速だ。 「俺は適切な事を言っているつもりだが。糞女と自己がない女、そして不出来なヒーロー。」 「なんでそんなこと言われなきゃいけないのよ!!龍牙達はなにもしてないでしょ!?」 クソビッチの吠える声が朝の道に響くたびに、おばさんの目の鋭さが増していく。はぁ……。 「……さっきから黙ってるけど説明してやれよ神城、五月蝿いからさ。ご主人様なんだからしっかり躾ないと。」 「……っ……。」 普通の主人公だったらヒロイン馬鹿にされて怒るところなんだろうけど……こいつは俯いたまま。なにも言えない、だから不出来なんだ。未完成なんだ。 「ほら、早く言え「もう止めて!今日の蒼はなんかおかしいよ!」……はぁ……由美、俺のなにがおかしいんだ?今まで溜まってた怒りをぶつけてるだけだけじゃないか。」 俺の言葉を途中で止め、俺の事をおかしいと言う由美。やっと発言したかと思えば……。 逆に今までがおかしいんだ、嫌な奴と無理やり登校させられて、なにも言わない。文句も許されない、そんな状況で怒りが湧かないわけがない。 ある意味奴隷に等しい環境だったのにさ。
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