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「……けっこうです」
沖田さんは笑った。が、一瞬その笑顔が笑顔に見えなかったような、そんな気がした。私の中でその違和感を考え続ける間もなく、沖田さんが話しかけてきた。
「余計なことはしないでください、頼むから」
沖田さんの鋭い視線が私の瞳の中まで射抜く。彼は、僕はもう寝ますと呟いてから布団に潜り込んでしまった。
どうやら沖田さんの機嫌を損ねてしまったようだ。笑ってはいるけれど、まるで感情を持たないかのような彼の笑みが私の脳裏に焼きついている……私は何か、いけない言動を気づかぬうちにしてしまったのだろうか。肩を揉むだなんて、彼にとっては余計なお世話だったのだろうか。
「あの……私、何かしてしまったのでしょうか……」
毛布を被っているため顔は見えなくなってしまったが、一応身体を沖田さんに向けて声をかける。……が、返事は無い。
――こう言ってはなんだが、扱いづらい人だ。一緒の部屋で過ごしているにも関わらず、彼のことはいまいち掴めない。
私は、昼間の永倉さんや山崎さんのように、沖田さんと笑い合える日々を迎えることができるのかな?
沖田さんの心の扉は、まだまだ開きそうにありません――
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