背中曲がってるぞ

6/13
前へ
/120ページ
次へ
         部室棟。 文化系の部室が並ぶこの校舎の二階最奥の部屋の前に立ち、僕は軽くノックをした。 「どうぞー」 返事を確認しドアを開けると、そこには今まさにスカートを脱ごうとしている師匠の姿があった。 「って、着替え中なら普通に返事すんなよ!」 思わず顔を逸らすが、一瞬にして脳裏に焼き付いた場面を脳内再生すると、スカートの下には紺のスパッツを履いていたことに気付き、恐る恐る視線を部室内に戻した。 「ははは、別に気にすることないだろ。案外うぶなんだな、良太は」 そう言って笑いながら、師匠は上に青いジャージ、下はスパッツという格好で腰に手を当てて構えた。 師匠が立ちながら話す時の癖だ。 「いいから、さっさと下履きなって。まさかそのままゴミ拾いするわけじゃないんだろ?」 「ああ、そうだな。じゃあちょっと向こう向いてるといい」 ふと気付いたように言うと、師匠は自然な動作でスパッツに手をかけた。 「それも脱ぐのかよ!?じゃあなんで部屋に入れるんだよ!?」 今度こそ完全に後ろを向き、僕は照れのあまり声を張り上げた。 「だから、私は別に気にしてないから、見たいのなら見ても構わないんだぞ?」  「別に見たくないし!ていうか、師匠も女の子なんだからそういう恥じらいはちゃんと持った方がいいと思う!」 正直、見たくないわけはない。 師匠は文句無しの美人だ。 本人が見られても僕を軽蔑しないというのなら、僕には師匠の着替えシーンを見るデメリットなんて存在しない。 だけど、なんか駄目な気がするんだ。 下心がゼロじゃないからこそ、ここで見せてもらったら僕は男として大切な何かを失ってしまう気がするんだ。
/120ページ

最初のコメントを投稿しよう!

448人が本棚に入れています
本棚に追加