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「ところで良太。一つ、お前にアドバイスを貰いたいんだが」
「俺が師匠にアドバイス?どうしたんだよ?」
「先ほど私は少し変わった物を拾ったんだが、これはゴミとして処理してしまってもいいものかと思ってな」
校庭中を歩き回ったんだから、そりゃ落し物くらいは拾うだろうが。
「これだ」
師匠が取り出したそれは、白い便箋だった。
女子生徒のものと思われる宛名が右下に記されており、特にハートマークのシールが貼ってあるというわけでもなかったが、これはどう見ても。
「ラブレター、だよな?」
「多分そうだろうな」
「ゴミでは、ないと思うけど」
「やはり良太もそう思うか。なら捨てるのはやめておくか」
何故だか妙な空気が流れ、僕と師匠は十メートルほどの距離を無言で歩いた。
沈黙を破ったのは師匠だった。
「開けてみるか?」
「え!?いや、それはどうかと……」
「そうか。ならどうする?」
まるで僕を試すかのように、師匠はニヤッと笑って言った。
「どうするったって……」
まだ未開封なことからして、これは差出人が渡す前に落としたに違いない。
なら、落とした人がこの手紙が無くなっていることに気付いたらどうする?
きっとめちゃくちゃ焦るだろう。
ラブレターなんて渡す相手に読まれるのだって恥ずかしいだろうに、それを落としてしまいどこかの誰かに読まれてしまうだなんて、もう怖すぎて学校に来るのも嫌になってしまうかもしれない。
これはなんとかして、落とし主に気付かれないようこっそりと返してあげたい。
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