『なんか』じゃない!

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師匠に確かめようかと思い視線を向けると、相変わらずのじとっとした目で何故かこちらを睨み続けていた。 「し、師匠?」 「その場で立ち止まる」 師匠は呟いた。僕の目を見つめたまま。 「良太はどうだ?そこに立ち止まっていればそれで十分だとしたら、良太はそのままそこに居続けられるか?」 質問の意味が、分からない。 「例えば、良太は目的の無い旅をしているとする。それは目的を見つける旅だといってもいい。その旅の途中、良太は居心地の良い村を訪れる。そこには素敵な人達が居て、ここで一緒に暮らそうと言う。良太ならどうする?目的が無いまま旅を続けるか。それとも目的を探すことを止め、満たされた生活に甘んじるか」 放送で言ってた内容とは少しズレているような気もするが、この例えならまだ分かりやすい。 「俺なら、旅は止める。旅の先は何があるのか分からないんだろ?なら、確実な今を俺は選ぶ」 そもそも、目的って何だよ。 そんな曖昧なもののために、満たされた今を手放すなんてどうかしてる。 「そうか。良太はそう答えるか。それも間違いとは言えない。だがな」 師匠は立ち上がり、机を勢いよく叩いた。 「そんな卑屈な考えでどうする!出会った仲間が惜しいなら、一緒に旅に連れて行くくらいのことを言ってみろ!」 旅は道連れ世は情け。 その発想は無かったな。 「そうか、分かったよ良太。どうやら私は、こんなことをしている場合じゃないようだ」 そう言って僕を見るその目には、もう湿気は残っていないようだった。
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