話し合いで解決しようじゃないか

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「おらおら、さっきの威勢はどこ行ったんだよ!?」 「何か言ってみろよコラァ!」 羽交い絞め担当の二人に左右から怒声を浴びせられ、僕は身体中の痛みと果てしない気怠さのあまり、思わず舌打ちと共に本音を口に出してしまった。 「チッ、さっさと死ねよクズ共」 あまりにもありきたりで個性の欠片もない罵り文句だが、それでも暴行担当の不良優等生のご機嫌を損ねるには十分だったらしい。 「てめぇ、自分の立場解ってんのかゴラァ!」 ブチ切れた暴行担当は教室の大事な備品である椅子を持ち上げ、僕の真ん前で大きく振りかぶった。 うわ、当たったら痛そう。 「おわ、あぶね!」 流石にそこまでやるとは思ってなかったらしく、羽交い絞め担当の二人は慌てて左右に飛び退いた。 やっと両腕を解放され、もしかしたら避けれるかもと淡い期待を抱いてみたが、タイミングはかなり際どく、頭を腕で庇うのは間に合わなかった。 「はは、ざまぁ見ろ」 左側頭部に鋭い痛みと衝撃が走り、僕は横に転がりながら咄嗟に傷口を押さえる。 間一髪でこめかみを避けたものの、抑えた手には生ぬるい湿り気を感じた。 あぁ、何で僕がこんな目に。 僕はただ、こっそり放課後の教室で黒板を綺麗にしていただけなのに。 そこをあの不良達に絡まれ、放っておいてくださいと飾り気のない言葉で頼んだだけだっていうのに。 まだ、黒板は半分しか綺麗になっていない。 やだなぁ、粉まみれの黒板。 早く綺麗にしてあげたいなぁ。
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