それがお前の強さだ

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僕は今、母親と二人で暮らしている。 もともと家族は全部で四人だったけれど、五年前に兄と父を交通事故で失ってからは、すっかり性格の丸くなってしまった母と仲睦まじく平和な日々を過ごしている。 「だから、洗濯物は昨日のうちに出しとけっていつも言ってんだろうがクソババア!もっかい回さなきゃいけなくなったじゃねぇか。遅刻したら呪ってやるかんな!」 「りょーちゃんは朝から元気溌剌だねぇ。いいよいいよ、たまにはお母さんがやっといてあげるから」 「あげるじゃねぇだろ!てめぇの服だろうが!もういいから黙ってモーニングバード観てろクソババア!」 「うん、ありがとりょーちゃん。このハムエッグ凄く美味しいよ。あ、たまちゃんまた髪型変わったねー」 朝食を摂りながら朝のワイドショーを観始めた母さんのためなんかじゃ決してなく、洗濯が終わるまでの間にコーヒーブレイクを楽しむ僕自身のついでに、僕はコーヒーを淹れて母さんに差し出した。 「お、流石りょーちゃん。気が利くねー」 「黙ってろ馬鹿」 僕と母さんの関係は、昔からこうだったわけじゃない。 母さんは僕が生まれる前から立派に主婦をこなしていたし、僕も小学生の頃は子供らしく家事に携わることなんて一切無かった。 僕らの関係が少し変わったのは、兄さんと父さんを失ってからのこと。 母さんはあれからしばらく塞ぎ込み、僕は生きるためにしょうがなく家事をマスターした。 母さんが立ち直ったのは割と最近のこと。 前から厳格だった母さんはすっかり別人のようになってしまったけれど、これはこれで悪くないなと僕は思っていたりする。
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