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「あ、そうだりょーちゃん。そういえばまだ今月のお小遣い渡してなかったよね?」
ふと思い出したようにコーヒーを置き、母さんはどこからともなくお札を出した。
「ああ、そうだな。今日の買い物どうしようかと思ってたとこだ」
「もう、お買い物だけじゃなくて、りょーちゃんのお小遣いも含まれてるんだからね?高校生なんだから、放課後買い食いしたりしないと駄目なんだからね?」
僕は、決して自分からお小遣いをもらいにはいかない。
これだけ生意気な口しかきかないのだから、もらいにいけるわけなんてないんだけれど、高校生の間はバイトをしないと決めた僕には実際のところお小遣いなしは結構辛いので、こうやって気を利かせてくれるのは凄く助かる。
「別にしなきゃいけないわけじゃねぇだろ」
とりあえず必要最低限のツッコミを入れつつ、僕は財布を取り出した。
「あれ?りょーちゃん、それ……」
母さんは僕の財布に目を留めた。
「どうした?」
「そのお財布、いつから使ってたっけ?」
「確か、小学生の頃買ってもらったやつだけど?」
くたびれた僕の財布を見つめ、母さんはゆっくりと瞬きをしてから、にっこりとほほ笑んで立ち上がった。
「ちょっと待ってて」
何を思ったのか母さんは部屋へと小走りで向かい、僕はいつの間にか食べ終えてあった食器を片づけた。
ちょうど僕が食器を片づけ終わったところで、母さんはラッピングのされた小さな箱を片手に携えて戻って来た。
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