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「え……?良太、今何て言った?」
師匠は突如両手の力を抜き、呆然とした顔で僕を見つめた。
「ちょっ!……っとっとっとぉ。危ないだろ、ちゃんと持ってろよ!」
窓ガラスの反対側を支える力を急に失い、僕はバランスを崩しながらも、なんとか踏み留まった。
「ああ、悪い悪い。良太があまりにも驚愕の誘いをしてくれたから」
再び師匠と二人でガラスを持ち、息を合わせてゆっくりと床に置いた。
「終わったら何か食いに行こうって言ってるだけだろ。俺がそんなこと言うのはおかしいか?」
「いや、おかしくはない。ただ、初めてのことだから驚いただけだ。是非行こう、すぐ行こう」
「あー、はいはい。これが終わったらな」
僕は腰に手を当て、ぽっかりと空いた窓枠を苦笑いで見据えた。
今日の奉仕活動は割れた窓の応急処置。
やんちゃな生徒だらけの我が山岸南高校では、窓が割れるのは日常茶飯事だ。
まだ梅雨も明けていないしそのままにしておくわけにもいかないので、生徒会から僕らに依頼が来て、僕らは嬉々として修繕に来たというわけだ。
流石にガラスの取り付けは業者じゃないとできないので、ダンボールとガムテープによる応急処置に過ぎないけれど。
「ふん、こんな応急処置程度、三分で終わらせてやろう」
師匠がそう言った時には、既にダンボールの四隅がガムテープで固定されていた。
流石神流師匠、動きがいちいち神速です。
「ところで良太。もちろん奢ってくれるんだろうな?」
師匠は壁に手を付きながら、ガムテープを僕に投げ渡した。
残りは任せたということですか。
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