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「何当たり前みたいに言ってんだよ。自分の分は自分で買ってくれ」
ガムテープを伸ばし、師匠が仮止めしてくれたダンボールをしっかり固定した。
「いいだろ、たまには。日頃からお世話になっている先輩にあんまんをご馳走したって、罰は当たらないさ」
「自分で言うなよ。卑怯だぞそれ」
「何とでも言え。私は良太にあんまんを奢ってもらうためならどんな卑怯なことだってしてみせる!」
「そんな決意いらねぇよ。てか、あんまんが食べたいのか?」
「放課後コンビニの駐車場で男子と一緒にアイスやあんまんを食べるのが夢だったんだ」
「どこのお嬢様だよ」
僕はガムテープを貼り終えると、笑いながら師匠にガムテープを投げ返した。
「ん?知らなかったか?私は割と箱入り娘なんだぞ?」
師匠はガムテープを片手で受け取り、上目遣いに微笑んだ。
「俺の知ってる『箱入り娘』ってのは、不良三人を瞬殺したりはしないと思うんだけど」
「あはは、まぁとにかく、早く行こう。ああ、楽しみだなぁ、良太と寄り道。良太と買い食い」
師匠は心底嬉しそうに笑い、踵を返して部室へと向かった。
その姿は珍しく少女地味ていて、久しぶりに、師匠も十七歳の女の子だということを思い出した。
口に出したら怒られそうだけど。
僕もその後を追いながら、割れてはいない窓から外を見た。
空には相変わらず雲がかかっていて良い天気とは言えないけれど、この分なら雨の心配はしなくてよさそうだ。
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