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「まぁまぁ、そう言わずにまずは俺と遊ぼうぜぇ?」
始めからやる気満々だった真ん中の人が相変わらずニヤニヤしながら前へ出た。
気持ち悪い。
「うらぁ!」
「おっと」
いきなり殴りかかってきたものの、見た目の気持ち悪さとは裏腹に意外と速い右を持っていたために、僕は思わずそのパンチを避けてしまった。
「なっ……避けてんじゃ」
大きく空振った後、慌てて振り返りもう一発が来るのが見え見えだったので、思わず一歩後ろに下がってしまった。
気持ち悪いし。
「ねぇよ!」
彼は気合いを入れて腕を伸ばすものの、案の定僕には届かなかった。
気持ち悪い。
「くそ、舐めやがって」
いつの間にかマジになっていた熱い瞳で、彼は僕を睨みつけた。
気持ち悪い。
この程度なら、大人しくやられているよりも、逃げて撒いた方が早く済むかもしれないな。
気持ち悪いし。
三人の位置関係を掴むべく視線を視野の隅から隅まで走らせると、残りの二人がしゃがみ込んで予想外の行動を取っていることに気が付いた。
「うっひょー!高そうなサイフはっけーん!」
余った二人は、僕が投げ捨てた鞄を漁っていた。
なんてこった。こいつら僕の予想以上にクズだった。
「おお!中も結構あるぜー!こいつ、意外と金持ちのボンボンかぁ?」
今月の食費。
師匠との買い食い代。
母さんの気持ち。
「それに、触るな」
腹の底から込み上がってくる感情は僕の声に溶け込み、低く鈍く、気持ちの悪い笑い声を上げる三人の耳には届くことなく、体育館裏に響き渡った。
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