それはお前が考えろ

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七月。 期末テストが始まると共に少し長引いた梅雨は明け、五日間に及ぶ憂鬱なテストも終わってみれば、あとは青い空と白い雲と来る夏休みが僕らを待つばかりだった。 テスト最終日は全学年が同じ時間に終業となるので、僕は師匠を待たせまいと早足で教室を飛び出した。 「あー!見つけたー!」 渡り廊下を歩いていると、突如後ろから声を上げた女子生徒らしき人物に、僕は見つかったらしい。 振り向いてみると、駆け足でこちらに向かって来るちょっと可愛目なその女子生徒を、僕はどこかで見たことがあるような気がした。そりゃ、同学年なら見たことはあるだろうが。 「なかなか見かけないと思ったら、七組の人だったんだぁ」 僕は思わず足を止めて、彼女とどこで知り合ったのかを思い出そうと目を閉じた。 四秒ほど経った後、再び目を開けて、正面に立っている少女の顔を記憶と照らし合わせた。 「あ~……誰だっけ?」 結局、聞いてみるのが一番早そうだった。 「あ、えっと、いやぁ、こんなベタな学園ドラマみたいなこと言うのもなんだか恥ずかしいんだけど……この間不良に絡まれているところを助けて頂いた者です」 彼女はもじもしとしながら語った。  「ああ、あの時の。下駄箱の」 先月末、僕が不良に殴られ、最終的に師匠のあんまんを奢らされるハメになった元凶の人物だった。 いや、彼女は何も悪くはないけれど。 「キタヤマミヤコ!北の山に、都会の都って書いて北山都!親しい子には『ヤマト』って呼ばれてるけど、できれば『きーたん』とか『みーやん』とか呼んで欲しいな!」 「どういたしまして」 僕はそう言って、彼女と目を合わせずに歩き出した。
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