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「ちょっ、ちょっと待ってよ!まだお礼言ってないよ!?先読み!?しかも棒読み!?せっかくのボーイミーツガールのチャンスを棒に振っていいの!?」
あまりに的確なツッコミをするものだから、僕は思わず足を止めて、もう一度彼女を見据えた。
確かに、あの三人組が必死になってナンパするくらいには可愛いかもしれない。
けど、何故かその瞬間、僕の脳裏に二人の女の子の顔が浮かんだ。
「間に合ってます!」
五月に師匠と出会い、六月に西表と出会った。
月一でボーイミーツガールだなんて、やってられるかっての。
僕は鞄を脇に抱え、ダッシュで部室へと向かった。
「せ、せめて名前だけでもー!」
僕は別に女の子と出会いたくて奉仕活動してるわけじゃないんだ。
見返りなんて、僕は欲しくないんだ。
「はぁ、はぁ、はぁ。撒いたか」
部室の前まで来たところで、後ろを振り返り、なんとか北山を撒いたことを確認する。
まさか追いかけてくるとは思わなかった。ビビった。
「そんな簡単に諦めるのかよ!」
ノックをしようと裏拳をドアに掲げた瞬間、中から男の声が聞こえ、僕は手を止めた。
これは確か、生徒会長南原武士の声だ。
「諦めるとか、そういうことじゃないだろ。どうしようもない。もう決まったことだし、これが自然なことなんだ」
師匠と南原先輩が、話している。
一体何の話を?
「はぁ……ま、そうだよな。俺がここで喚いたってもうどうしようもないことだ」
「悪いな。南原には世話になったのに」
「そう思うんなら、さっさと俺を選んでくれると嬉しいんだがな」
「あはは、悪いがそれはない」
「いちいち言わんでいい。じゃあ、またな」
ドアが開いて、僕は慌てて一歩後ろに下がった。
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