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「そうか、裏木良太か」
ニッと笑うと、先輩は再び黒板に向き直り、落ちていた黒板消しを拾った。
「もしかして君も、奉仕活動中だったのかな?」
先輩はそう言うと、滑らかな動きで黒板消しを黒板の右半分に走らせた。
女子としては平均的な身長であるため上の方までは届かなかったが、黒板の右下半分はあっという間に白い跡も残さず綺麗になってしまった。
僕は左半分に三十分以上かけたというのに。
「ふぅ。これだから、黒板消しは私には向かない。人の力を借りないと完璧にはできないからな」
片腕を思いっきり挙げたことにより乱れたセーラー服の襟を直すと、先輩は「んっ」とだけ僕に声をかけて黒板消しを差し出した。
僕は迷うことなくそれを受け取った。
「師匠って、呼んでもいいっすか?」
「師匠?ははは、こりゃあいい!気に入った!良太、これから一緒に奉仕活動をするぞ!」
「え、今からっすか?」
「そういう意味じゃない。これからずっと、私と良太で奉仕活動をするんだよ。喜べ、今日からお前も奉仕活動同好会の一員だ!」
「奉仕活動……同好会」
「そうだ。善いことをすると気持ちが良い。その気持ち良さを得るためだけに、世のため人のためになることをしていく同好会だ。といっても、良太が二人目の部員だけどな」
この日、僕は人生の中でもベストツーには入る運命的な出会いをした。
東雲神流。
この人はきっと、僕の求めているものをくれる。
この人についていけば、僕のなりたい僕になれる。
僕はこの人に、圧倒的に惹かれてしまったんだ。
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