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平日。
朝目が覚めてやることといったら、身支度を整えて洗濯機を回して掃除機をかけて二人分の朝食を用意して洗濯物を干して一人分の朝食を摂るくらいしかやることがない。
外に出ないと奉仕活動ができないだなんて、不便な世の中だ。
「おはよー、りょーちゃん」
目を擦りながら寝巻き姿で現れた四十代の女性を見て、僕はわざと聞こえるように舌打ちをした。
「今日は遅番なんだからこんな時間に起きてこなくてもいいだろうが。無駄にその顔見せんじゃねぇよ胸くそ悪りぃ」
時計を見ると、ちょうど八時になろうというところだった。
「んー、だってぇ、羽鳥さんの顔見ないと私の一日は始まらないんだもーん」
そう言って、母さんはテレビのチャンネルを六番に替えた。
「はぁ。俺もう行くから。食器洗う気がないならせめて水に浸けとけよ」
「りょーちゃんは本当に良い子だねぇ。こうやっていつもお母さんのこと助けてくれるし、ご飯は凄く美味しいし」
「う、うるせぇクソババア!誰が良い子だ!サラダは冷蔵庫に入ってるからドレッシングでもかけて食えよクソババア!」
「うん、行ってらっしゃーい」
鞄を乱暴に掴み、靴ベラで適当に靴を履き、勢い良く開けたドアを閉めて鍵をかけてちゃんとかかったかを確認してから道路の方に振り向くと、そこには嬉しそうに微笑む女子高生が立っていた。
「おはよう、良太」
「師匠?何やってるんだよこんなとこで」
「おはよう、良太?」
師匠は僕の問いかけに答えず、もう一度朝の挨拶を繰り返した。
「お、おはよう師匠」
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