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「はぁ」とため息を吐いてから、雪が俺を引っ張り出す。
連れてこられたのは洗面所。
綺麗に整頓されたそこでなんともピリピリとした空気が漂う。
なんだか、いつもの雪と雰囲気が違う……
すこしばかりの不安な気持ちの現れか、髪の隙間から雪を伺う。
「ねぇ、神無」
「なんだ?」
「私って神無にとってなんなの?」
――前にも似たようなことを聞かれたな。 にしても、いきなりどうしたんだ?
「そりゃ、彼女だよ」
「でも! ……神無は私のことを好きじゃないんでしょ」
「……――」
『好きだよ』その言葉は俺が言うには無責任で言えない言葉だ。
瑠宇ちゃんの父、西条真から俺は、人への愛をその形で受けられないと宣告された。
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