『合コン』

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「それじゃあ今日はお疲れ様でしたー」  宵も深まり酔いも深まった頃、記念すべき初めての『合コン』は終りを告げた。何人かは二次会と称して酒屋が列なる通りを練り歩く様であるが、私は朝が早い事もあり、一足先に帰路につく。  首にマフラーを巻き暖かなコートに身を包み、酒屋街の方へ行く連中に小さく手を振り、歩き出す。私の隣には何故か神足豊が居り、「じゃ、行きましょうか」等と如何にも紳士らしく私をエスコートする。  結果として、『合コン』はそこそこ成功だったと言える。それなりに皆と上手く騒ぎ、飲み、『王様ゲーム』とやらで盛り上がり、そして最後に神足豊と連絡先を交換。その流れで彼は私を途中まで送る運びとなり、今こうして、程好い距離を置いて歩いている。  街は華やかに彩られていた。店や街路樹には幾多もの電光が煌めき、子供連れから恋人までが愉しげに並んで歩いている。 「やっぱりクリスマスは良いですねぇ。何というか、子供心を擽られる」 「そういえば今日はクリスマスだったか」 「……水守さん、本気で言ってます?」  そう、今日は西洋文化の最たる祭り日、クリスマスだったのである。最近は仕事が忙しく日付を逐一確認する暇なんぞなかったのだが、この日の為に慌ただしかったのだと今更ながらに思い至る。漸くの余暇に男女親睦会、まさかその日がクリスマスであったとは。 「ははっ、やっぱり水守さんは面白い」  私の渋面を見て、神足豊は心底可笑しそうに笑った。 「何もそこまで面白がる事もないだろう。仕事が忙しくて忘れていたんだ」 「いやぁ、それにしても……ははっ、水守さん、しっかりしてそうに見えて意外に抜けているんですね」 「抜けているとは心外だな。変わっていると言ってもらいたい」 「どちらにしても、面白い事には変わりないですよ」  私の細やかな反論を笑い飛ばし、少しばかり先んじていた歩みを緩め、隣に並ぶ。こうしてみると思いの外背が高い事に気付く。歳の割りに体型は若々しく、何故あのような場に来ていたのかと思う程、女性に人気のありそうな男性だ。 「でも、そうですか。忘れていたの言うのなら、今から取り返しましょう。良い場所があるんですよ。良かったらご一緒にどうです?」 「……まあ、あまり釈然としないが、良いだろう。神足さんにお任せするよ」 「それはそれは。じゃあ、行きましょうか。すぐそこなんですよ」
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