『合コン』

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 あれだけ言ってやれば、追いかけてくることもない。全く、甚だしいにも程がある。誰があのような男なんぞに私の唇をやるものか。 「はぁ……」  ため息一つ。私は携帯電話を取り出し、越子に電話を掛ける。幾度かの電子音の後に、「もしもーし」と電話の向こうから酒の匂いが漂ってきそうな程のだらしない声が響いた。 「ああ、私だ、水守だ」 「あー、美枝ちゃんかぁ。どうしたの? 神足さんと仲良しこよししてたんじゃなかったの?」 「いや、まあ、それはどうでも良い。取り敢えず、今日は誘ってくれてありがとう」 「いえいえ、どう致しましてー」 「それで、悪いんだが私は今度から『合コン』には参加しないでおくよ。ああ、すまないな。それと、『婚活』も良い。どうやら私はまだ一人身が性に合っているらしい」 「……ふうん?」  訝しむ様な声が、電話の向こうから漏れる。 「そっかそっか。まあ、美枝ちゃんがそう言うなら仕方ないね。また気が向いたら言ってよ、しっかりセッティングしてあげるからねー」 「ああ、ありがとう。……それじゃ、飲みすぎない様にな。おやすみ」  電話を切り、再度ため息を吐く。  越子には悪いが、今日を持って良く分かった。やはり、どうやら私はまだまだ一人身を楽しみたいらしい。神足豊にあの様な事をされても脈一つ速くならなかったのが良い答えである。  真に結婚を望む女性であったのなら、あの場で唇を許していたのだろう。神足豊は別段、選択を誤った訳ではない。ただ、相手が『変人』たる私であったのが何よりの失敗。どうも頭で考えていたよりも全然私は家庭を持とうとは思っていないようだ。いやはや、我ながらに奇々怪々とんでも思考である。  ーーまあ、しかし。こんな私を私は気に入っているのだから、仕方がない。結婚は暫しお預け、今はまだ、この『変人』っぷりを存分に楽しむ事にする。  手始めに、まずはこのクリスマス。家に着くまでの僅かな間だけでも、美しき聖夜の燈に浸っていよう。 終わり。
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