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実の言うC地区の話、というのは恐らくこの間の掃討作戦のことだろう。
「ああ報道されてたな。酷い有り様らしいし…地下の人達は大丈夫かな」
「どうなんだろうな。一応この地下空間の天井にはぶ厚くて硬い壁が有るらしいけど…キューブの攻撃力は凄まじいからな」
そう言い、俺達は上を見る。天井までの高さはそこそこあり、見上げた先の天井は光で眩しい。
天井には人口太陽が点々と存在していて、一つ一つの光の出力は抑え目である。
「雲って…どんな形してたっけ」
ポツリと実がこぼした言葉を俺は聴いた。
「雲に決まった形なんかないだろ」
俺は笑いながら言う。
「それもそうだったな」
実も笑って応える。
俺達はきっと無理な笑顔を作っていただろう。
いや作っていた。
分かってはいたけど、どうして無理な笑顔を作っていたのかを理解したくなかった。
もし理解してしまったら…もし地上に恋い焦がれてしまったら……きっと長生きすることはできない。それだけを理解していた。
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