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男は返事に困ったのか、煙草を吸い始めた。
私だって別に本気で会いたいわけじゃない。
ただ、こうして確認するのが習慣のようになっていた。
ふぅと煙草の煙を吐き出しながら、男は申し訳なさそうに言う。
「やっぱりやめとくよ。俺はその、独り者じゃないし」
「そう」
私はそれ以上、何の追及もしなかった。
私だって本当は独り者じゃないわ――。
心の中で自嘲しながら、私はベッドの中でじっとしたまま。
シャワーを浴びようとも服を着ようともせず、ベッドの中で動かない私に男は苛立ちを感じ始める。
「そろそろ出よう」
男は煙草を灰皿に押し付け、急かすように言った。
その言葉で私もノロノロと立ち上がる。
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