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私が2千円分の玉を打った時、男の台がまた大当たりした。
当然まだ私は当たっていない。
2千円ぽっちの金額では、よほどラッキーでない限り当たらない。
チラリと横目で男の方を見ると、彼も私の方を見て私たちは目が合った。
「この店、よく出るんですか?」
「いやぁ、俺もここは初めてでね。営業の帰りにたまたま寄ったらラッキーでさ」
私が話しかけると男は嬉しそうに答えた。
「じゃあ、これから会社に戻るんですか?」
「ん? 今日はこのまま直帰」
私の質問に答えながら、男は私の顔や上半身を遠慮なく見つめてくる。
その視線を意識しながら、私は誘ってみた。
「それなら一緒に食事でもどうですか?」
男を気に入ったわけではない。
特別嫌な相手じゃなければ誰でもいいのだ。
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