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「ここ、休憩は2時間だからさ。あと15分だよ」
延長料金が勿体無いと言わんばかりの口ぶりだった。
私は半ば投げやりな口調で告げる。
「先に出ちゃっていいわ。一人で帰れるから」
「いいのか?」
「ええ」
「じゃ悪いけど、もう行くよ。あ、これ……」
男は財布から一万円札を出すとテーブルの上に置き、お札の端を灰皿で押さえた。
「前金制だから支払いは済ませてあるけどさ。念のため」
「念のため?」
「延長とかタクシー代とか自由に使ってよ」
「……」
「じゃあ俺、本当に行くから。さよなら」
そう言って男は呆気なく部屋から出て行った。
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