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「…なんでここにいるわけ?」
再び望月君は問いかけてきた。
「…ちょっとイヤなことがあって無意識に走ってたらいつの間にかここにいたんだよね」
「…ないてた理由ってそれ?」
望月君は手を止め立ち上がり私がいるベンチまで歩いてきた。
「…そう、付き合ってた彼氏に彼女がいてね、そのゴタゴタで別れることになったんだけど、私がそこから離れようとしたらいきなりキスしてきて…好きだって…もう…意味わかんない…」
また涙がこぼれてきた。 なぜか関係ない望月君にこんなに話すこと出来るんだろう?
初対面なのに…
「…ここ、園芸部の庭園の一つなんだよ、んでここの管理を任せられてるのは俺」
望月君はあたりを見回しながら言った。
「…よかったらこれやるよ」
そう言って差し出されたのは小さな小包。中身は…
「…何これ?」
私は涙を拭いながら問う。
「…これは種だよ、アガパンサスの。きれいな青紫の花を咲かせるんだ。花言葉は恋の訪れ」
私はそれを受け取り不思議そうな顔で望月君をみる。
「いつまでも辛いこと引きずるな。だから次踏み込めない」
そういうと手を差し伸べ私の涙を親指で優しく拭い微笑んでくれた。
その時私はわかってしまった。
今手のひらの中にあるこの小さな小さな種がまた新たな恋を運んできてくれたことを…
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