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緑が映え、風が吹くにつれ葉同士がぶつかり合い涼やかな旋律が鳴り響く。
木々だけではなく、小さく儚く咲き誇る可愛らしい花々。
無意識に走っているといつの間にかこの場所にいた。
近くにベンチを見つけ私は腰を掛けた。
さっきまでの緊張の糸が切れてふっと涙がこぼれてきた。
「…うっ…ひっく…」
カサッ
草をわけるような音がした。
「…誰かいるのか?」
草村のほうから声がした。
声がしたほうを見ると見知らぬ男子が立っていた。
私は驚き急いで涙を拭う。
それでもまだ目が赤いため俯いてしまう。
「…アンタ誰?」
少しずつ声が大きくなり近づいてくるのがわかる。
私は俯きながら答える。
「えと…私は三年の櫻木畝那です…」
それを聞いた彼は「ふうん…」と素っ気なく答え、近くにあるシャベルを持ち花壇の手入れをしている。
「あなたは…?」
私は勇気を振り絞り問いかける。
「…俺は三年、望月 由希瑠<もちづき ゆきる>だけど…」
手は止めずただ目を私に向け答える。
私は一言だけ「…そうなんだ…」と返した。
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