その名を

2/10
前へ
/12ページ
次へ
「おい、見てみろよ! また落ちこぼれのゲイグが剣を振ってるぞ」  見るからに柄の悪い少年は取り巻きに向かって、やはり汚物を発見したが如く言い吐いた。  良に不らざる者共は、例に漏れること無く筋骨隆々である。  彼らは落ちこぼれと呼ばれたゲイグの眼前へ立ち、小石を拾うかの如く剣を掴み上げた。 「ブンブンうっせーんだよ! このカス野郎!」  ゲイグは容易く剣を投げ捨てられる。 さらに突き立てられた拳は、胃ごと背骨を潰したかのようだった。  四人身ほどあろうかと言う距離を飛び、ブロックの壁にて運動エネルギーをゼロへと変えられる。  全身が秒二回ほど、不定期にビクつく。これがなるほど、痙攣と言うものだろう。  構うこと無く、追い討ちをかけるべく輩共は歩みを進める。  だが薄れゆく意識の中、目の前に現れたのは幼馴染みのエリスだった。 両手を広げ、まるでゲイグを庇うかのように。 (俺を……守るつもりなのか?)  すると筋骨隆々な不良は口元を吊り上げ、賤しく笑った。  その手には魔から呼び寄せし雷が黒く弾けていた。 其をくらうと、一瞬で意識は手放さなければならなくなるだろう。  意識を失った女の末路は……。  言わずもがなだ。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

32人が本棚に入れています
本棚に追加