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「だって……飲みすぎたら、大樹に怒られちゃうもん。」
「別に、怒りはしないよ。ただ心配になるだけ。」
そう言いながら、おつまみの封を丁寧に輪ゴムで止めていく。
その手の動きが、突然に私の方へと向けられる。
優しく触れられた頬は、きっとアルコールで赤かったに違いない。
「だって……お酒の入った紗智、めちゃくちゃ可愛いんだもん。」
「ふぇ……?」
「無防備っていうか、素直すぎるっていうか。いちいち、俺のツボに嵌まりすぎなんだよ。」
「……。」
けれども大樹のそんな甘い言葉で、更に顔が紅潮して、今の私はタコにも負けないくらいに尋常でない赤さを帯びていたと思う。
「だから……俺以外の男の前で、そんな姿は見せて欲しくないの。」
茶色の瞳がまっすぐに私を見つめて、目を逸らすことすら赦してくれない。
「……それって、ただの独占欲?」
「そうだよ。悪いか?」
そして、ゆっくりと重ねた唇からはアルコールの香りがして、頭がくらくらとした。
「誰かに、見られたらどうするの?」
唇が離れた瞬間に、至近距離にある大樹に訊いてみると、途端に意地悪に微笑み始める。
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