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「見られちゃ拙いことでもあるの?」
「だって……恥ずかしいじゃん。っていうか、大樹は恥ずかしくないの?」
「そんなに……かな。キスなんて、外国じゃ挨拶代わりらしいし。」
私とは違って、外国慣れしている大樹。
彼自身にそういう習慣はなくても、そういう光景を目の当たりにするのは、珍しいことではないのかもしれない。
「……ひとりで恥ずかしくて、悔しいし。」
口を尖らせて拗ねたように抗議すると、またも甘い言葉が私を追い詰める。
「なら、俺が恥ずかしがるようなこと、していいよ?」
「えっ!?」
「そうだな、普段はあまり見られない、紗智からの積極的なキスとか……」
不意打ちの言葉に私は、只管に翻弄され続けるだけ。
「無理!! 無理です!!」
「無理じゃないよ……」
そう小さく呟いて、大樹の柔らかい唇が触れる。
ゆっくりと味わうように深くなっていくキスに、恥ずかしげもなく応え始めるのに時間は掛からなかった。
静かな部屋に響く甘い音。
誰か起きてきたらどうしようって、頭の片隅では考えつつも絡めたキスを止めることなんて出来ずに、何度も角度を変えて夢中になって唇を重ね合った。
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