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紗智は和食の時、欠かさずに味噌汁を作ってくれる。
少し塩っ辛いけれど、紗智の作ったものなら何でも美味しく感じるから不思議だ。
そして朝食を済ませると、すぐに身形を整えて、事務所に行く準備を始める。
薄手のジャケットを脇に挟み、デザイン画の入ったアタッシュケースを手に持つ。
玄関まで見送る紗智の首筋に、軽くキスをする。
それから唇にも2回のキス。
あ……スイッチ、入れちゃったか?
目の前にある紗智の顔が真っ赤になり、奥二重の中にある瞳が潤めば俺の勝ち。
ちなみに今まで全戦全勝。
その上、にっこりと微笑んでみせたならば、暫くの間、紗智は俺のことしか考えられないだろう。
「それは、独占欲の塊っすねー、大樹さん。」
そう俺に言ってきたのは、隣の椅子で同じようにデザイン画を眺めている、後輩の可児君。
俺よりも5歳も年下のくせに、すでに3児の父親。
「可児君は奥さんに対して、そんな風にはならないの?」
そう言いながら、昼食代わりに買ってきた飲むゼリーを口にする。
忙しい時は事務所にケース買いして置いてあるこれが、俺のエネルギー源となる。
「なりません。だって俺、嫁と付き合ってもう10年ですよ。それに……うちのは鬼嫁ですから。」
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