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またも冷やかされそうになり、俺はその言葉を打ち切って事務所を出た。
そして駐車場に向かう途中に、作成する1通のメール。
『仕事終わったよ。何か買って帰るものある?』
それを送信して、車に乗り込みエンジンを掛けたくらいに、いつも返信がある。
『お砂糖が少ないよー。コーヒー用のやつだよ。』
その返事を見て、今日はスーパーへの寄り道が決定した。
通勤に40分、買い物で10分。
家に着くのは18時過ぎくらい。
「ただいま。」
そう言いながら玄関に入ると、いつも駆け寄ってくる紗智の足音。
けれども今日は、家の中が静まり返っている。
こういう場合は大抵……
「紗智、帰ったよ?」
いちばん奥にある寝室の扉。
半開きになっている中を覗いてみると、ベッドの上で琴羽と寄り添うようにして眠っている可愛い寝顔があった。
その頬に触れると、まるで赤ちゃんのように暖かくて心地良い。
「……ん、大樹?」
目を擦りながら俺を見上げる紗智が、起き上がろうとするのを俺は制した。
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